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2.不動産投資の初期投資にかかる費用
更新日:2020年8月6日
不動産を取得した場合には、不動産の本体価格以外にどのような費用がかかるのか、整理します。
●売主と清算する公租公課
ご自宅をお持ちの方は、ご存知の通り、不動産を所有していると毎年、固定資産税と都市計画税の支払い通知書が5月~6月頃に送付されてきます。固定資産税と都市計画税を合わせて公租公課とここでは呼びますが、この公租公課は、不動産の引渡しの期日をもって清算します。一般的には引渡日以降が買主負担、引渡日の前日までが売主負担となります。
ここで、毎年送付されてくる1年分の公租公課は一体いつからいつまでの1年間の税金なのかを確定させる必要があります。
そもそも、この公租公課は、毎年1月1日時点で所有している不動産所有者に1年分の公租公課の支払い義務が発生します。したがって、その年の1/1~12/31の1年間の公租公課と解するのは、ごく普通の考え方で、この場合、1/1を起算日と言います。関東では、このように起算日を1/1にするケースが多いと言われています。
一方、関西では4/1を起算日とすることが一般的のようです。この場合、4/1から翌年の3/31までの1年間の公租公課ということになります。ちなみに、1/1時点の所有者に課せられる公租公課は、その年の4/1から役所で確認可能となります。

例えば、6/15が引渡日の場合には、上図の通り、関東流であれば、買主負担は200日分、関西流であれば290日分となります。売主は、送付されてきた納付書の基づき1年分の公租公課を支払いますが、売買の際に、買主から関東流であれば200日分、関西流であれば290日分の公租公課をもらうということになります。計算方法は、関東流の場合、
1年間の公租公課×200日÷365日
となります。
尚、例えば1/1を起算日とする関東流の場合、例えば2月に引渡しを行う場合には、1年分の公租公課が確定していない状態になります。(4/1にならないと金額が確定しません。)このような場合には、一般的には、前年度の公租公課をもって清算し、仮に、今年の公租公課との差異があっても更なる清算はしないという形が一般的です。
ここでは、清算という言葉を使いましたが、精算と記載されることもあります。どちらの漢字も使われております。お金の場合には、精算がなじむように感じますが、不動産業界では公租公課は清算すると記載されている場合が多いように感じます。
また、ここで、重要なこととして、建物の公租公課の清算金には、消費税を課す必要があることにご留意ください。このような形で清算された金額は、買主の経理処理としては、不動産の取得原価として簿価計上するという処理となります。このため、土地の公租公課の清算金は土地代に、建物の公租公課の清算金は建物代に加算することになります。したがって、建物の公租公課清算金は建物代金ということになり、消費税が課せられることとなります。この消費税に関しては、日割り計算で算出した金額を消費税込みの金額とする場合と、別に消費税を加算する場合の両方があります。住宅系の不動産の場合には、課税売上割合の関係上、支払った消費税の殆どがそのまま経費になってしまう可能性が高いので、別途、消費税加算をされることは避けたいところですね。
年間公租公課が73万円、土地と建物の公租公課がそれぞれ36.5万円で会った場合の、1/1を起算日とする関東流の清算金は、次のようになります。ここでは、わかりやすいように、建物公租公課清算金に消費税を加算しております。
土地公租公課清算金 36.5万円×200日÷365日=20万円
建物公租公課清算金 (36.5万円×200日÷365日)×1.1=22万円
公租公課清算金合計=20万円+22万円=42万円
また、不動産投資ではありませんが、住宅の買換え特例の適用等の税制特例の適用を受ける場合には、価格の上限が定められている場合がありますが、この公租公課の清算金は取得価格の上昇につながりますので、注意も必要ですね。
最後になりますが、今年のようなうるう年の場合には、366日になることにもご留意ください。
●収益及び費用の精算金
特に賃貸不動産の場合には、毎月の収入や支出があります。このような収入や支出についても、前述の公租公課と同様に引渡日をもって区分して精算します。但し、これらの精算は、引渡し時に金額が確定していない金額もあるため、引き渡し後に別途精算することも一般的です。
収入は一般的には次月分を当月分に受領していますし、支出は一般的に当月分が次月に請求されてきたりします。水道代は一般的に2か月に1回の請求になります。
●仲介報酬
買いたいと思う不動産を発見し、売主との交渉を進めていく過程では、不動産仲介業者に依頼することが一般的です。不動産仲介を規制する宅建業法では、仲介に関する手数料は、下表のように定められています。

ここには報酬の上限が記載されていますが、不動産業界では、報酬額の上限が、あたかも報酬額であるかのように言われることが多いと思います。一方、ITの活用や組織的な独自の取り組みの中で、この仲介報酬を下げて営業活動を行う不動産仲介業者も増えてきたように感じます。極力下げられた方がよいのは当然ですが、仲介報酬の減額は交渉事ですので、少なくとも予算の状態では、上限あるいは上限に近い数字を考えておいた方がよいと思います。
●登録免許税
登録免許税は、登記の際に課せられる税金です。

不動産を取得した場合の移転登記に課せられる登録免許税は、土地が1.5%、建物が2.0%という税率です。尚、自宅としての住宅の取得に関しては、各種の軽減税率が存在します。
また、通常、不動産を取得する際には、借入を行うケースが多いと思われますが、この場合には、金融機関のために抵当権を設定する必要があり、この費用が発生します。
●司法書士費用
移転登記については間違いがあってはいけないので、一般的に移転登記は、司法書士に依頼することになります。金融機関から借り入れを行った場合には、自分自身で移転登記を行うことは認めてくれないものと思います。
司法書士への報酬額は設定が自由化しており、具体的な金額は事務所ごとにことなるのですが、報酬額が自由化される前の2003年までの基準額が参考になります。現在でもこの基準から大きくことなる報酬にはなっていないものと思います。
この基準は、下表のように定められていました。

1億円の課税標準価格の物件であれば、45千円ほどの金額になると考えられます。また、抵当権設定については、1億円の場合で約30千円ほどの報酬となります。
●不動産取得税
不動産取得税は、取得した後6か月ほどすると納付書が届きます。忘れた頃にやってくるという感じです。また、自宅用の住宅については軽減措置があり、取得税がかからないケースも多いため、ご自宅を購入された方でも支払われた記憶がない方も多いと思います。

●不動産本体価格以外の費用の概算
精算金(公租公課の清算金を含む。)は、取得時期にもよりますが、それ以外の費用で大きな費用は、取得税、登録免許税及び仲介報酬となります。実際の取引価格と取得税と課せられる課税標準額は異なりますが、仮に売買価格を100(土地が60、建物が40)、課税標準額が売買価格の60%、借入額が売買価格の70%と想定すると、これらの費用の合計は下表の通りで、合計では売買価格の6.4%となります。

1億円の不動産を購入するのであれば、640万円程度が必要になる。これら以外にも、司法書士費用や精算金が発生し、ここでは記載しませんでしたが、売買契約や金銭消費貸借契約には印紙も必要になるため、7.0%程度の費用は必要になると考えておいた方がよい。この費用の中で圧縮可能なものは、不動産仲介報酬となるが、最初からこの仲介報酬を極端に小さく見積もると、世の中の仲介業者から良い情報を得られないという結果を招く可能性もあるため、売買価格の交渉と共に、上手に仲介業者と付き合うことが必要になると考えられます。