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7.相続を取り巻く環境の変化
更新日:2020年8月6日
私が、相続について考えるようになったのは、50歳を過ぎてからです。自らの父を亡くしたことや、親を亡くなった友人や同窓の先輩方から相談を受けることが多くなったためです。また、相続でなくとも、親が認知症になったとか、親が入居する施設探しが大変だったとか、友人達が話していることを耳にする世代となりました。
これまで、相続税対策については、あまり真剣に取り組んできませんでした。株式や現金ではなく不動産を相続財産にすれば、相続税評価額が小さくなることは、仕事柄、もちろん知っていましたが、反対側で不動産事業のリスクも経験してきており、相続税対策のために不動産事業を薦めることには抵抗がありました。
そのような中、平成25年度の相続税法改正(平成27年度1月より適用)に伴い、より多くの方々に相続税の支払い義務が発生することになりました。また、超高齢化社会と言われる現在、年金に期待できないという認識のもと、長期的な収入補填の方策として不動産投資に興味を持つ人々が多くなってきているという流れもあったものと思います。
相続税対策も視野に入れサブリースを前提としたアパート建設が増加し、また、サブリースを前提とした賃貸アパートの販売も目立つようになりました。なぜ、こんな場所に建てられたこのようなアパートがこの値段なのかと首をかしげるような物件情報を目にした記憶もあります。案の定、社会問題にも発生なりました。スマートデイズ(旧スマートライフ)社が販売していた“かぼちゃの馬車”というブランドのシェアハウスやこれに加担したとされるスルガ銀行の不正融資問題が代表例です。完成した建物を長期間サブリースするという事業は、過去にも度々問題になってきております。またまた、あくどい商売も横行していると思いながら、距離を置いて遠くから見ているという感じでした。

しかし、近年、相続関連の相談を受けるにつれ、相続にしても不動産の売買にしても、人生の中で、何度も経験することではないため、そもそも、基本的な理解が足りないと感じるようになりました。ネット上にも多くの情報が掲載されていますが、包括的に全体像を理解することは、やや、難しいのかもしれません。
また、いざ、相続が発生した時の相続税の金額は、かなり大きいということについても、改めて認識しております。もちろん、いわゆる財産家の方々は代々相続税対策を行ってきており、相続税の金額についても認識しています。しかし、財産家とまではいかなくとも、自らが高い所得税を支払いながら築いたちょっとした財産にも結構な相続税が課せられます。将来の年金等による生活を約束してくれる訳でもないのに、という気持ちになるのは、よくわかります。
超高齢化社会となった日本では、非正規雇用の増加等も相まって公的年金に対する不信は高まり、自分が死ぬまでの収入に対する不安は高まっていると思います。他方、女性の活躍は益々期待され、また、労働力の減少を補うために高齢者の労働も求められています。終身雇用制とは異なる様々な就業スタイルが許容され、AIの活用の進化に伴う業務の高度化・効率化は、消えていく既存のビジネスを増加させていくでしょう。
このような就業スタイルの変化の中で、生活スタイルにおいては、晩婚化が進むとともに、男女共に生涯未婚率は高まり、また、離婚率も高まっています。そもそも、夫婦や家族の在り方が既存の固定概念の理想形に収まることは不可能に近いと考えられます。少子化には歯止めがかからず、外国人労働者も徐々に増加していくのではと思われます。
人気取りの政治には期待できるはずもなく、優秀な官僚がモチベーションを維持することも困難となったこの社会は果たしてどこに向かうのかは、誰もわかりません。しかし、まだまだ過渡期にあり、就業スタイルも生活スタイルも変わっていくと思われます。
不透明な将来を前提に将来の相続を考える場合、相続税の金額の問題だけでなく、親の高齢化や痴呆に対する不安、自分自身の高齢化、兄弟姉妹の中の未婚、離婚、再婚、非正規雇用等の存在により、財産分割等の合意形成は益々難しくなりつつあると思われます。財産を遺す人にとっては、益々被相続人としての自覚が求められることになるように思います。
当社は、このような先の読めない社会の中でも、個々人のスタイルに合わせた不動産の在り方を相談者と共に考え、その手助けとなるようアドバイスを行っていきたいと願います。