top of page
検索
  • towermanagement

6.必ず遭遇する将来の相続に向けて

更新日:2020年8月6日

相続は、一生の間に何度も起こるものではありませんが、必ず遭遇する重要なイベントです。また、その時期を予定することはできません。私自身もそうですが、親の財産状況について、あれこれ聞くのも変な話ですし、子供の立場としては、親の好きなようにやってくれればいいかなと考え、関与しないケースが多いように思います。相続税がゼロあるいはほとんど発生しない財産状況であれば、特段の問題はないでしょう。

しかしながら、突然に相続が発生し、相続財産はあるにしても、多額の相続税を払う事態になった場合には、気持ちの中で、“もっと、なんとかやりようがあったのでは“と思うかもしれません。そのためには、まず、相続税を計算するうえでの基礎控除の金額を把握し、ざっくりと、ご自宅等の土地の相続税路線価等を調べてみることをお薦めします。建物については、築年数によりますが、例えば1坪当り10万円(1㎡あたり3.3万円)程度と仮定して大まかな数字を把握すれば、不動産の数字は把握できます。平均的な被相続人の財産状況であれば、不動産が全体の40%程度となっているため、不動産が合計で40百万円であれば、全体では1.0億円程度の相続財産になるかもしれません。不動産以外で大きな財産は現金と株式になりますが、これらについては、ご両親にざっくりと聞いて把握されることをお薦めします。この程度のやわらかい段階で、明らかに多額の相続税が発生するかもしれないと感じられるのであれば、きちんとご両親に、財産状況の開示をお願いしてもよいのではないでしょうか?その結果、ご両親がしっかりお考えで、自分の取り越し苦労であれば、それが、わかったことで十分ですね。もし、結構な金額の相続税が発生するかもしれないと想定される状況であれば、専門家等に相談することも一つの手です。当社でも、専門家等を連携しながら、お手伝いすることが可能です。

また、相続を考える場合、相続税だけではなく、以下の点についても、留意しなければならないと思われます。


① 兄弟姉妹との関係

相続において、兄弟姉妹間で論争になることは、常に言われてきていることです。戦前の家長制度の時代は、長男がその財産を相続するのが当たり前だったのかもしれませんが、現在は、平等が原則です。ここで、問題になるのは、均等に分割した財産以上の財産を要求するケースが起こりうることです。

介護等に対する対価の要求がでてきたり、過去の結婚資金や就学資金等の名目による多額の資金援助を理由として特定の兄弟に対する減額要求がでてきたり、はたまた、非正規雇用等の理由で単純に自分だけが多額の財産分与が欲しいと言い出したりと、様々な事態が起こりえます。この状態になると、親族がよく言われる争族になってしまう可能性が十分にあります。これもよく言われますが、兄弟姉妹だけでなく配偶者も存在することから、話は益々ややこしくなる可能性があります。

これらの問題に裁定を下せるのも親であり、親が明確な相続方法を遺言として残してくれればいいのですが、親が頼りない家族もたくさん存在するのではないかと思います。兄弟姉妹で仲良く助け合って生きてほしいという親の気持ちはわかりますが、この言葉で兄弟姉妹間の争族問題が解決しないことは言わずもがなでしょう。

この争族問題に対する明確な回答はありませんが、実際に相続が発生する前に、何らかの合意形成を図っておくことが望ましいと考えられます。いざ、相続が発生した場合には、相続税の申告期限まで10カ月という時間的制約もあり、じっくり話をすることにはならない可能性が高いです。結局、それぞれの意見をぶつけるだけとなり、第三者を入れての裁判という形になる可能性が高くなっていきます。

また、まったく、別な観点となりますが、兄弟姉妹が存在する場合に、一つの不動産を共有等の形態で均等に相続することは、基本的にお勧めしません。不動産にはリスクもあり、また、継続的な運営や敵的な修繕も必要になります。これらの負担について意見がまとまらない可能性は十分にあり、責任の所在が曖昧になり、争いの種になる可能性があります。また、必要な場合には処分して換金する事態も出てくる可能性がありますが、所有権を持つ全員が換価処分に賛成できない可能性は高く、これまた、大きな争いになり、結果的に不動産の価値が必要以上に低下していくというリスクを内在させることになります。可能な限り、代償分割(遺産の分割に当たって共同相続人などのうちの1人又は数人に相続財産を現物で取得させ、その現物を取得した人が他の共同相続人などに対して債務を負担するもので現物分割が困難な場合に行われる方法)の方法等を活用することが望ましいでしょう。


② 親の問題

現在の超高齢化社会で厄介な問題は、親の認知症リスクです。体の健康は医学の発達により長寿命化が進んでいますが、その一方で、脳がこれについていけない状態が多くなってきています。親が認知症になった場合には、前述した兄弟姉妹間の問題を親が解決することは勿論、そもそも、財産処分等を行うことが極めて難しくなります。後見人制度等もありますが、司法の許可を得ることが必要となるため、多大な時間と労力を必要とすることとなります。

これを解決する方策として、家族信託が活用され始めていますが、まだまだ、活用されているとまでは言えない状況だと思います。家族信託は、遺言の準備に近いかもしれませんが、親が所有している財産の運用等を兄弟姉妹の誰かに委託することを決める必要があり、また、最終的な財産処分の方法についても、一定の指針を示しつつ、処分の実務をだれかに任せることを決める必要があります。上述の兄弟姉妹間の争族問題が発生するような状況になる前に、この方法により、一度、兄弟姉妹間で話し合いをすることも争族問題回避のひとつの方法になりうるかもしれません。

また、介護の問題もあります。最終的に兄弟姉妹間の遺産分割の問題になるかもしれませんが、介護を行ってくれた相続人に対しては、“被相続人の療養看護その他の方法により被相続人の財産の維持又は増加について特別の寄与をした者”として、寄与分を認められます。寄与分は、財産分割前に控除されるものとなりますが、他の兄弟姉妹に納得してもらえるように、兄弟姉妹間での合意文書や実施したエビデンスの保管を行っておいた方がよいと考えられます。また、相続人の親族であっても、特別寄与料として寄与分を認められるようになっているので、この点もお忘れなく。所謂、奥様が親の面倒を見てくれたというケースです。


③ 不動産の取扱い

不動産は、これまで説明した通り、評価額を圧縮できる可能性もありますが、上場株式等と異なり、すぐに売ったり、買ったりできません。また、小規模宅地の特例等の適用を受けたいと思っても、事業用宅地については3年縛りの条件もあります。そもそも、税制の趣旨として、相続税の圧縮のために不動産を活用すること事態が本末転倒であると言っていると理解しております。

不動産は、上場株式のように毎日取引がされて、価格が上下することはありませんが、大きな景気の波の中で上下を繰り返します。また、不動産を貸し付ける賃貸事業においては、どれだけの賃料が取れるかは重要な関心事となりますが、住宅、商業、オフィス等と用途によっても、また、立地によっても賃料は異なりますし、また、空室率の推移やテナントリーシングに必要となる仲介報酬等の費用も異なってきます。もちろん、建物の法定点検や経年劣化に伴う修繕や突発的な修繕等、維持管理にも費用がかかるのは当然です。

とはいえ、不動産事業は比較的安定したキャッシュフローを生んでくれるのも事実です。超高齢化社会と言われ、年金に期待できず、会社を定年退職した後の収入も心配となる現代においては、不動産賃貸業は、いくつかの収入補填の選択肢の一つになると考えます。

このように多角的な観点から自分自身が納得して、不動産賃貸事業を自分自身の事業のひとつとして考えていくのであれば、相続税対策も含めて、積極的に不動産事業について検討していく価値があります。

先ほどは、銀座の路線価図に基づき金額を想定してみましたが、金額的に、銀座の物件を取得できる方々は多くはありませんので、次に簡単な試算を示しておきます。1億円の現金だけが相続財産の場合と、この1億円と無理ない範囲での借入により不動産を取得し、これを相続財産とした場合の比較です。簡便のために、他の財産はないものとします。土地の評価額を500千円/㎡(1,653千円/坪)と設定し、土地の面積も100㎡としております。時価が約124百万円としております。このようなビルは、数多く存在すると思われます。

小規模宅地等の特例を適用するには必要な条件のクリアが必要になりますが、借家権評価を適用するところまでは可能です。この場合でも、現金1億円の場合の相続税1,220万円に比べれば、約900万円減額された約320万円の相続税となります。このメリットも考慮しつつ、不動産リスクとリターンを検討して、不動産事業に取り組むべきかどうかを検討していくことが必要です。また、ここでは、時価評価を単純な表面CAPによる評価にしましたが、実際には詳細な利回り計算や消費税も考慮したキャッシュフローのシミュレーションが必要です。また、不動産の相続税法上の評価も敷地形状や面積の大小によっても異なるし、地積規模の大きな宅地については評価減の制度もあります。また、相続税一般のこととなりますが、贈与の特例や相続時精算課税制度等、様々なメニューが存在します。これらの制度等も考慮しつつ総合的に検討することが必要になります。

尚、相続により所有している不動産については、登記名義人の変更がなされていないケースが多分にあります。いざ、売却を行うといった事態が発生した場合等には、相続発生時の他の相続人を探し出して、遺産分割協議書等の作成を行う必要があります。想像に難くありませんが、過去に相続人の権利を持っていた兄弟等は引越しで住所がわからなくなっていたり、お亡くなりになっていたり(更に、そのご子息等の相続人の探索が必要になります。)と、大変な時間と労力が必要になることが想像されます。

また、土地について確定測量がなされていないケースも多々あります。売却する必要が発生した場合には、必ず、確定測量図が求められます。どこまでも相続のみで子孫に渡していき、売却はしないと言い切れる人は誰もいないと思いますが、いかがでしょうか?自分はその費用は負担しないが、自分の子孫で必要になった人間が負担すればいいのだという発想なのでしょうか?ちなみに、不動産を物納しなければならなくなった場合にも確定測量図が必要になるということも認識しておいた方がよいでしょう。

閲覧数:9回0件のコメント
bottom of page