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4.小規模宅地等の特例

最終更新: 2020年8月6日

土地は、時価よりも低い評価額となることや借家権評価等により評価減額になることに加えて、小規模宅地等の特例が存在します。但し、この特例は、近年、適用が厳しくなりつつあります。基本的な考え方は、居住用、事業用及び貸付け用の土地について、一定の評価減額を行うことができるという特例です。これは、亡くなられた方の居所や事業を引き継いだ相続人が、引き続き継続できるように、土地の相続税を圧縮してあげるという趣旨です。

この特例は、特定居住用宅地等、特定事業用宅地等及び特定同族会社事業用宅地等(以下、総称して特定事業用宅地等)、貸付事業用宅地等の3種類に区分され、それぞれの減額割合及び限度面積は異なります。減額割合に表れているように、特定居住用宅地等と特定事業用宅地等については、80%減額され非常に大きなメリットがあります。他方、貸付事業用宅地等は減額割合が50%で限度面積も200㎡と最も小さい優遇措置です。また、この200㎡という限度面積は、更に、特定居住用宅地等と特定事業用宅地等の特例をそれぞれの限度面積まで利用しなかった場合の、未利用割合×200㎡までが限度となります。特定居住用宅地等と特定事業用宅地等の特例のいずれも利用しなかった場合は、200㎡まで利用可能ですが、いずれかを限度面積100%まで活用すれば、貸付事業用宅地等の特例は利用できません。また、特定居住用宅地等と特定事業用宅地等の特例のそれぞれの利用面積の限度面積に対する割合の合計が100%を超える場合も、同様に貸付事業用宅地等の特例は利用できません。

先に示した銀座の路線価に基づく時価と相続税評価額の計算は土地200㎡を想定していますが、貸付事業用宅地等の特例を適用すれば、大きな相続税圧縮につながります。

下表は、貸付事業用宅地等の特例を適用できた場合の評価額を示しています。


評価額は時価の2~3割程度に圧縮されることが理解できます。もちろん、この特例は、被相続人の事業を引き継いだ相続人が事業を継続できるよう、その負担を一定程度軽減することが目的ですので、そもそも、被相続人あるいは相続人が、事業を実施・継続する意思があっての話です。不動産賃貸事業にはリスクもあります。また、ここに示す数字は、あくまでシミュレーションに過ぎず、実際には、様々なコストや手間もかかります。ただ、数字だけで見ると、この程度の圧縮ができる可能性があることも事実となります。

また、貸付事業用宅地等の特例は50%の減額ですが、特定居住用宅地等や特定事業用宅地等については80%減額されるため、この特例が適用できるかどうかは、相続税を計算するうえで、かなり大きなインパクトを持ちます。

しかし、近年の改正により、いずれの特例についても適用条件も厳しくなってきております。

下記にそれぞれの内容を示します。


●特定居住用宅地等の特例

被相続人等が居住していた住宅の敷地については、相続人が引き続き居住等できるように相続税を減額するという特例です。(尚、後述の特例も同様ですが、“宅地”ではなく“宅地等”となっているのは、宅地だけでなく宅地の上に存する借地権等の権利も対象に含まれるためです。)

最もわかりやすいのは、被相続人の住宅を配偶者が相続した場合です。この場合は、特段の条件はありません。また、配偶者でなくとも、同居していた親族が相続した場合(少なくとも死亡の翌日から10カ月となる相続税申告期限まで保有し、居住していることが必要です。)にも適用されます。

これに加えて、転勤等の会社勤務の都合で一人暮らしの親と同居できず一般の仮住まいをしている子が相続した場合等も適用可能となります。但し、この非同居相続人の取得に関しては、①相続開始前3年以内に自己、自己の配偶者、自己の三親等以内の親族又は事故と特別の関係がある法人の所有する家屋に居住したことがないこと、②相続開始時に居住している家屋を相続開始前のいずれの時においても所有したことがないこと、という条件を満たすことがあることに留意が必要です。(少なくとも死亡の翌日から10カ月となる相続税申告期限まで保有していることも必要です。)

また、被相続人の住宅でなくとも、生計を一にする親族の住宅の宅地等を取得した場合にも適用されます。この場合も、被相続人の住宅の場合と同様に、配偶者が取得した場合には、無条件に適用されます。

“生計を一にする親族”とは、“日常の生活の資を共にすること”を意味しており、同居しているのであれば、共働きであっても生活費(食費や光熱費)を共有していれば生計を一にする親族となりますし、また、単身赴任や大学進学による一人暮らしによる別居の状況であっても、単身赴任先から、又は親元から生活費等を送金している事実があれば生計を一にする親族となります。

配偶者ではなく、この生計を一にしていた親族が自己の居住用としている住宅を取得した場合にも、適用されます。(被相続人の死亡の翌日から10カ月以内となる相続税の申告期限までに引き続き保有し、かつ、相続開始前から申告期限まで自己の居住用にしている場合に限ります。)例えば、子供は被相続人である親が所有する住宅に居住している一方で、子供が親に仕送りをして親は老人ホームで居住していた場合等が該当します。

また、下記の点についても留意が必要です。

① 主として居住の用に供されていた一の宅地等に限られます。(平成22年度改正)

② 1棟の建物内に、特定居住用宅地等の要件を満たさない部分がある場合は、特定居住用宅地等の要件を満たす部分のみを対象に按分により軽減割合を算出することが必要です。(平成22年度改正)

③ 被相続人の親が所有する土地のうえに存在する二世帯住宅に居住している場合は、建物が区分所有されていなければ、二世帯は同居しているとされ特定居住用宅地等の特例は適用可能です。区分所有されていても、台所等を共用しており、全体が被相続人の居住空間であったと認定されれば、特例適用の可能性はありますが、詳細な検討・確認が必要になります。(平成25年度改正)

④ 被相続人が老人ホーム等に入居し、使用されていなかった家屋の敷地についても、以下の条件を満たせば、相続の開始時直前において非相続人の居住の用に供されていたとされます。但し、被相続人が居住しなくなって以降、貸付け等の用に供されていない、または、被相続人と生計を一にし、かつ、引き続き居住している親族以外の者の居住用に供されていないことが条件となります。

・ 要介護認定、要支援認定を受けて次の施設に入居(入所)していた

イ.認知症対応型老人共同生活援助事業が行われる住居、養護老人ホーム、特別養護老人ホーム、軽費老人ホーム、有料老人ホーム

ロ.介護老人保健施設、介護医療院

ハ.サービス付き高齢者向け住宅

・ 障害者支援区分の認定を受けて障害者支援施設等に入居(入所)


●特定事業用宅地等(不動産の貸付け及び駐車場業は除く)

この特例は、被相続人の事業の用に供されていた宅地等を取得し、取得した親族が、相続開始時から申告期限(死亡の翌日から10カ月以内)までの間に事業を引き継ぎ、申告期限まで保有し、かつ、事業を営んでいる場合に限り適用されます。被相続人の事業を引き継いだ相続人の相続税負担を減額して、事業継続しやすいようにするものです。

また、被相続人と生計を一にした親族が、自己の事業を営んでいる被相続人所有の宅地等を取得した場合も、適用されます。(申告期限まで引き続き保有し、かつ、相続開始前から申告期限まで自己の事業を営んでいる場合に限ります。)このケースは、被相続人が所有していた宅地等の上で非相続人の配偶者が事業を営んでいる場合等が該当します。

但し、相続開始前3年以内に事業の用に供された宅地等は除かれるという3年縛りがあることに留意が必要です。これは、相続税対策のために被相続人所有の宅地上で形だけの事業を行うこと等を除外するためのものと考えられますが、他方、宅地上の建物等の減価償却資産の価格が宅地等の相続時の価格の15%以上であれば除外されずに、適用可能になります。また、平成31年3月末までに事業の用に供された宅地等については。この3年縛りは適用されません。(平成31年度改正)


●特定同族会社事業用宅地等(不動産の貸付け及び駐車場業は除く)

特定事業用宅地等の会社バージョンとなります。被相続人及びその親族その他の特別関係者の持株割合が50%超の法人(特定同族会社)の用に供された宅地を、被相続人の親族で当該法人の役員が取得(複数の場合、その一人)した場合に適用されます。(取得した親族が、死亡の翌日から10カ月以内となる相続税申告期限まで保有し、かつ、その法人の事業の用に供されている場合に限ります。)このケースは、被相続人が所有していた建物で、特定同族会社に貸し付けられていた場合の敷地を、その特定同族会社の役員である親戚が相続した場合等が該当します。


●貸付事業用宅地等

被相続人の事業である“不動産の貸付け、駐車場業”の事業の用に供されていた宅地等を取得した親族に適用されます。(相続開始時から死亡の翌日から10カ月以内となる申告期限までの間に事業を引き継ぎ、申告期限まで保有し、かつ、事業を営んでいる場合に限ります。)

但し、取得する宅地は、建物又は構築物の敷地であることが必要で、青空駐車場は除かれることに留意が必要です。

また、生計を一にする親族が“不動産の貸付け、駐車場業”を被相続人の宅地上で行っていた場合に、当該親族が当該宅地を取得した場合も、申告期限まで引き続き保有し、かつ、相続開始前から申告期限まで引き続き自己の貸付事業の用に供している場合には適用になります。

但し、相続開始前3年以内に貸付け事業の用に供された宅地等は除かれるという3年縛りに留意が必要です。これは、相続税対策のために賃貸事業を開始すること等を除外するためのものと考えられますが、他方、相続開始前3年を超えて事業的規模で貸し付け事業を行っている場合は除外されず、適用可能となります。また、平成30年3月末までに事業の用に供されていた宅地等については適用されません。(平成30年度改正)

事業的規模とは、社会通念上事業と称するに至る程度の規模を意味し、実質的に判断されるとされていますが、概ね、貸家であれば5棟、貸室であれば10室という事業規模を言います。また、混在する場合は、貸室2室が貸家1棟としてカウントし、駐車場は5件を貸室1室としてカウントします。また、これらの賃貸施設を共有している場合でも、他人の持分も含む全体で事業的規模か否かを判断することになります。この定義は明文化されてはいませんが、税務上の慣習として定着している概念と考えてよいと思われます。


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