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3.相続財産としての不動産の評価額

更新日:2021年7月21日

”1.相続税が発生するかどうかの判断基準”及び2.法定相続分と相続税及び配偶者では、相続税が発生するのか否か、また、相続人が誰になるのかによって、相続税がどのような金額になるのかについて説明しましたが、ここで、そもそも、相続財産の評価がどのようになるかについて説明しつつ、不動産の評価額について説明します。

まず、相続財産の金額の構成比は次表の通りです。


土地建物という不動産の構成比はこの10年間で約55%から約40%に小さくなってきているものの、依然、高い構成比になっていることが理解できます。他方、現預金が約20%強から約30%強へ増加してきていることも特筆されます。後述の通り不動産を相続財産とした方が相続税という観点からは有利に働くにもかかわらず、現預金の占める割合が増加している背景には、相続財産をいかに残すかということよりも、老後の生活資金や老人ホーム等への入居のために自宅や土地を売却して現預金化する傾向が強まっているのではとも言われます。

現預金については、その金額がそのまま相続税計算上の財産評価額になります。しかしながら、相続人となる子供たちに大きな相続税が課せられる可能性がない場合や相続税を支払えるだけの現預金を相続財産として残せるのであれば、長い老後の人生をエンジョイするためにも、不動産よりも現預金を厚めに保持するのは当然のことだと思います。相続対策以前の話として、まずは、個人の人生をいかに充実して過ごすかが重要と考えます。

したがって、各個人の望む充実した人生を確保できるという前提の上で、また、被相続人となる方々の考え方や意見も踏まえて、相続について考えていく必要があります。

一方、それでも、不動産の相続財産に占める割合は4割程度あることからも、不動産が相続税法上、どのような取り扱いをされるかを知っておくことは重要です。現預金以外の主な相続財産となる不動産や有価証券をどのような評価額とするかは、相続税法等で決められています。不動産は相続税の節税効果があると言われていますが、ここで、不動産の評価額がどうなるかについて説明します。

相続税の財産評価基本通達により、土地については路線価方式による評価とし、建物については固定資産税評価額とするというのが基本となります。但し、同通達には、“この通達の定めによって評価することが著しく不適当と認められる財産の価額は、国税庁長官の指示を受けて評価する。”という例外規定があることは認識しておくべきです。昨今の相続税対策には、タワーマンション等の不動産の時価と評価額の差異を活用するものがありますが、相続税対策として行き過ぎたケースについては税務否認されるリスクがあることを認識しておくことが必要です。

さて、不動産が相続財産評価上、具体的にどのようなことになるのかを説明します。

まずは、土地について説明します。次図は、銀座3丁目あたりの路線価を示したものです。



国内の主要な市街地については、このように道路の路線毎に価格がつけられております。路線価が設定されていないエリアについては倍率方式という方法で相続税評価額を算出しますが、これは、土地の固定資産税評価額に指定された倍率を掛け算して評価額を求めるという方式になります。通常の市街地については、上図と同様、路線価が決められております。この路線価に基づく評価額の算出方法は、複数の路線に面している場合や、土地の形状が不整形な場合等は調整が必要になりますが、概ねの価格を把握するためには、土地が接している最も高い路線価を単価として、面積に掛けることで計算できます。路線価は1㎡あたりの数字で単位は千円となります。

一方、建物の固定資産税評価額は、新築時は請負工事金額の約50~60%が目安といわれますが、家の規模や構造、築年数などによって評価額は違ってきます。また、建物の築年数の経過とともに、3年に一度の見直しで、“再建築価格 ×経年減点補正率”で計算された評価額に見直されます。経年減点補正率は築年数の経過とともに建物の評価額を小さくしていきますが、留意点は20%を下回らないという点です。また、再建築価格は物価上昇に伴い上昇するので、建物の簿価のように減価償却の進行と共に小さくなるものではないということを認識しておくことが必要です。

さて、下表は、土地の面積を200㎡とした場合の上図のA~Dの路線価での評価額及び下記に示す同じ建物が存在した場合の土地建物の評価額を簡易に計算したものです。


銀座といっても、中央通り沿いのど真ん中ではないのですが、それでも、このような評価額になります。一方、銀座にこのような不動産があった場合に、どのような値段になるのでしょうか?建物の有効率(賃貸面積÷延床面積)、空室率、賃料単価、表面CAP(賃料収入÷価格)を想定して、下表のように算出してみました。不動産マーケットは、コロナによる経済自粛モードになる前までは、バブル期をも凌駕するような価格になっており、下表で示した金額を上回る価格での取引も十分にありえる状況でした。但し、この先のマーケットは読みにくいため、少々控えめな数字としています。表面CAP(Capitalization rate)とは、年間賃料収入と不動産価格の比率で、売買価格に関する取引上の目安となる指標です。


しかしながら、それでも、路線価評価額とは著しくことなることが理解できるのではないでしょうか?

更に、不動産は第三者への賃貸事業を行っている場合には、

 建物:評価額×(1-借家権割合)=評価額×(1-30%)=評価額×70%

 土地:評価額×(1-借地権割合×借家権割合)=評価額×(1-借地権割合×30%)

とされます。(厳密には、借地権割合に外部へ賃貸している賃貸割合を乗ずることが必要。)

この減額を考慮すると、相続税評価額は、下表のように概ね時価の半額以下となってきます。


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